鋳造への熱きロマン
「新世紀の鋳造業への夢」
技の伝承
広島市工芸指導所 石谷凡夫
ここ数年、鋳物づくりを介して親しくなった幾つかの中小工場の職人さんがひとりまた1人、現場を去って行くのに何度か出逢った。永年鋳物にかかわり「カタシ」「ヨウカイシ」と呼ばれた熟練者の方々である。
ある職人さんは「集中力」を、またある人は「躰で覚える」ことに大切さを強調し、別のある人は「オシャカ」で腕を磨いたという。
こうした職人さん達が退職すると。この人達がもっていた技が、跡形もなく現場から消え去っている。技を伝える若者がいないことを嘆いた職人さんもいたが、たしかに技の継承が非常にむずかしくなった現在である。
鋳物づくりの基は技にあるといってよかろう。その技を伝えることの重要性は今後さらに増すものと思う。優れた技を世に残すため、その手段を鋳物する心をもつ人々が、知恵を出し合って探求したいものである。
この文は支部創立50周年記念式典にて個人表彰を受けられた方々より寄稿された特集のものです